遺言は有用だが、自分一人で書くのは注意

遺言・相続

遺言の有用性

 本ホームページ2月19日の記事で、「特別受益」や「寄与分」のあるようなケースでは遺言が役に立つことをご説明しましたが、他にもあります。

 例えば、相続人に認知症の人がいると、家庭裁判所に代理人を選任してもらうまで遺産分割協議ができません。また、相続人に、異母兄弟や被相続人と再婚した配偶者など遺産分割の話し合いが揉めそうな人たちがいる。あるいは、子どもがいない夫婦の場合、被相続人の親や兄弟姉妹が相続人に加わってきますが。このような場合、遺言で遺産の分け方を指定してやる方が安心です。

自筆証書遺言

 遺言には、公証人に依頼して作成する「公正証書遺言」と本人が自筆で書く「自筆証書遺言」があります。ここで注意しないといけないのは、「自筆証書遺言」は、専門家を入れず自分だけでやろうとすると、要件不備のため無効とされ、当初期待していたような結果が得られないことが多いということです。

 自筆証書遺言の要件は、本人が、「遺言の内容」「日付」「氏名」を「手書き」して「押印」するということです。押印は認印で問題ありません。一見簡単なようにも見えますが、それでも、本文あるいは添付財産目録がパソコンで作成されている、日付が〇年〇月吉日となっており特定できない、など作成上の不備を指摘されるものがあります。訂正の仕方も厳格に決められており、無効原因となることが少なくありません。

 他にも、トラブルが発生した時、本人の意思で作成したことを立証するのは必ずしも容易ではありません。作成後も、紛失や偽造されるリスクがあることには留意すべきです。(※令和2年7月10日以降、遺言書保管所制度ができましたが、ここでは説明を省略いたします。)

公正証書遺言

 専門家に間に入ってもらい、公証人立ち合いのもとに作成する「公正証書遺言」の場合には、「自筆証書遺言」のような、要件不備で無効にされることや紛失、偽造といった心配はなくなります。

 なお、詳しい説明は省略しますが、「公正証書遺言」には決められた手続きがあるため、完成までに相応の時間(及び手数料)がかかります。従って、依頼者が高齢のケースなどでは、「公正証書遺言」が出来上がるまでの間に亡くなるリスクを考慮して、繋ぎの「自筆証書遺言」を用意するというようなことを検討することもあります。

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