特定技能(建設)を利用した外国人材採用について

外国人関連

2019年4月から、特定技能(建設)による外国人材の受け入れが始まりました。建設業界も人手不足を背景に、特定技能外国人の受け入れ数は年々増加しています。

特定技能外国人を受け入れるには、外国人の方・受け入れ企業の双方が要件を満たす必要があります。さらに建設業の場合、建設技能人材機構(JAC)への加入や建設キャリアアップシステムへの登録など、業界独自のルールもあります。ここでは、制度がどんなものなのか全体像を見てみましょう。

特定技能(建設)とは

在留資格「特定技能」は、2018年12月に、一定の専門性・技能を持つ外国人材の受け入れを目的として創設されました。特定技能(建設)も建設業界の人手不足を背景に12業種の一つとして定められています。12業種とは以下のとおりです。

①介護、②ビルクリーニング、③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、④建設、⑤造船・舶用工業、⑥自動車整備、⑦航空、⑧宿泊、⑨農業、⑩漁業、⑪飲食料品製造業、⑫外食

建設分野における特定技能外国人の受け入れは、2019年4月から始まっており、2022年4月には熟練した技能や実務経験が求められる2号特定技能外国人の受け入れも行われました。

(注)なお、当然のことですが、他の「特定技能1号」外国人採用の際と同様に、特定技能(建設)でも当該外国人に対する支援が不可欠です。「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成し、当該計画に基づいて支援を行わなければなりません。(この支援は、受け入れ企業が自ら行うこともできますし、登録支援機関に一部あるいは全部を委託することも可能です。)

技能実習とどこが違うのか

在留資格には以前から技能実習の制度があり、建設業界でも多くの外国人材に来ていただいております。特定技能(建設)と技能実習はどのような違いがあるのでしょうか

特定技能技能実習
目的即戦力となる外国人材を受け入れるための就労制度日本で習得した技術を母国に移転するための実習制度
業務一定の専門性・技能を要する業務を主たる業務とし、関連業務として単純労働にも従事できる技能実習計画で定められた業務にのみ従事し、単純労働には従事できない
技能水準就労する分野において一定の専門性・技能が必要不問
転職同一の職種であれば可不可
在留期間特定技能1号:最長5年間
特定技能2号:無期限
技能実習1号:1年間
技能実習2号:2年間
技能実習3号:2年間
家族の帯同特定技能2号のみ条件付きで家族(配偶者や子)の帯同可不可

両者の大きな違いの一つは、求められる技能水準です。特定技能の場合、在留資格の取得に当たって、就労する分野における一定の専門性・技能が必要です。

また、技能実習2号を良好な成績で修了すると、特定技能1号への切り替えが可能なため、優秀な技能実習生の在留期間を延長し、引き続き自社で働いてもらいたい、という場合にも特定技能制度が適しています。

特定技能(建設)にはどういう職種があるのか

現在の特定技能(建設)には、建設業のすべての職種が含まれています。ただし、後でご説明する
特定技能(建設)の取得に必要な試験は、土木区分、建築区分、ライフライン・設備区分の3区分に分かれており、試験に合格した区分の範囲内で業務に従事できるという制度です。各区分の試験に合格した方が従事できる業務の範囲は以下の表のとおりです。

試験区分土木区分建築区分ライフライン・設備区分
従事することが可能な範囲さく井工事業
舗装工事業
しゅんせつ工事業
造園工事業
大工工事業
とび・土工工事業
鋼構造物工事業
鉄筋工事業
塗装工事業
防水工事業
石工事業
機械器具設置工事業
大工工事業
とび・土工工事業
鋼構造物工事業
鉄筋工事業
塗装工事業
防水工事業
石工事業
機械器具設置工事業
内装仕上工事業
建具工事業
左官工事業
タイル・れんが・ブロック工事業
清掃施設工事業
屋根工事業
ガラス工事業
解体工事業
板金工事業
熱絶縁工事業
管工事業
板金工事業
熱絶縁工事業
管工事業
電気工事業
電気通信工事業
水道施設工事業
消防施設工事業
具体的な業務内容は、建設業許可の分類に従った。

特定技能(建設)の要件

外国人が特定技能(建設)を取得するには1号・2号の二つがあり、それぞれ要件は次のとおりです。

特定技能1号特定技能2号
技能水準①以下のいずれかの試験に合格          
・建設分野特定技能1号評価試験
・技能検定3級
②技能実習2号を良好に修了(※)した者は試験免除
以下のいずれかの試験への合格に加えて、一定の実務経験(※)が必要
・建設分野特定技能2号評価試験
・技能検定1級
※建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての経験
日本語能力水準①以下のいずれかの試験に合格
・国際交流基金日本語基礎テスト
・日本語能力試験(N4以上)
②技能実習2号を良好に修了した者は試験免除
試験免除
ここでは各試験の詳細は省略します。.

※技能実習2号を「良好に修了」したものとは、技能実習を2年10か月以上修了し、次のいづれかを満たす必要があります。 

①技能検定3級又は技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること。
②技能検定3級又は技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していないものの、実習中の出勤状況や技能等の習得状況、生活態度等を記載した実習実施者が作成した評価調書により技能実習2号を「良好に修了」したと認められること。

特定技能1号(建設業)に試験免除等になる技能実習2号の職種・作業

建設業界で受け入れ可能技能実習2号の職種は下記のとおりです。建設業として受け入れた外国人材は必ず建設業の現場で業務についてもらう必要があります。

職種作業
さく井パーカッション式さく井工事
ロータリー式さく井工事
型枠施工型枠工事
鉄筋施工鉄筋組立て
とびとび
コンクリート圧送施工コンクリート圧送工事
ウエルポイント施工ウエルポイント工事
建設機械施工押土・整地作業
積込み作業
掘削作業
締固め作業
鉄工構造物鉄工作業
塗装建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接手溶接
半自動溶接
建築板金内外装板金作業
ダクト板金作業
建具製作木製建具手加工作業
建築大工大工工事
石材施工石材加工作業
石張り作業
タイル張りタイル張り作業
かわらぶきかわらぶき作業
左官左官作業
内装仕上げ施工プラスチック系床仕上げ工事
カーペット系床上げ工事
銅製下地工事
ボード仕上げ工事
カーテン工事
表装壁装
サッシ施工ビル用サッシ施工
サッシ施工シーリング防水工事
築炉築炉
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工
配管建設配管
プラント配管
熱絶緑施工保温保冷工事

受入企業が行う手続き

建設分野の1号特定技能外国人を受け入れるために企業に課された手続き等があります。
主なものを列記しましたのでご参照ください。

受け入れ前

  • 建設業法第3条許可の取得
  • JACに間接的または直接的に加入
    特定技能外国人受入事業実施法人である建設技能人材機構(JAC)への加入です。
    受入企業が、JACの正会員である建設業者団体の会員である場合には、JACに間接的に加入していると見なしますので、JACに直接的に加入する必要はありません。一方で、JACの正会員である建設業者団体の会員になっていない場合、JACに直接的に加入し、JACの賛助会員となることが必要です。
  • 建設キャリアアップシステムへの登録
    建設キャリアアップシステムは、技能者ひとり一人の就業実績や資格を登録し、技能の公正な評価、工事の品質向上、現場作業の効率化などにつなげるシステムです。建設業振興基金が運営しています。登録は、建設業振興基金のホームページからすることが可能です。登録申請は受け入れ企業だけでなく、特定技能外国人も行う必要があります。
  • 特定技能雇用契約に係る重要事項説明
    受入企業は、必ず「雇用契約に係る重要事項事前説明書」(告示様式第2(第3条関係))を用い、1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、事前に当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、雇用契約に係る重要事項について理解していることを確認する必要があります。
  • 特定技能雇用契約の締結
  • 建設特定技能受入計画の認定申請(オンライン申請(地方整備局等))
    特定技能(建設)による受け入れ企業は、建設特定技能受入計画を策定し、オンライン(外国人就労管理システム)による申請を行う必要があります。建設分野における上乗せ規制とも呼ばれ、他の特定技能の分野にはない独自の要件です。
  • 1号特定技能外国人支援計画の作成
  • 「在留資格変更許可申請」または「在留資格認定証明書交付申請」(窓口またはオンライン申請(地方出入国在留管理局))

受け入れ後

  • 1号特定技能外国人受入報告書の提出(オンライン申請(地方整備局等))
     
     ※受入後より1ヶ月以内に提出
  • 受入後講習の受講
    (一財)国際建設技能振興機構(FITS)
      ※概ね6か月以内に受講

特定技能(建設)人材の採用の仕方

特定技能(建設)の在留資格で、外国人材を採用する方法は2つあります。1つは、建設技能人材機構(JAC)を通じた人材紹介。2つ目は、技能実習2号から特定技能1号への移行です。

1.建設技能人材機構(JAC)を通じた人材紹介
建設技能人材機構(JAC)は、無償で特定技能(建設)を取得した外国人材の紹介を行っています
外国人材を受け入れたい企業は、建設技能人材機構(JAC)に求人情報を掲載することで、条件に合った特定技能外国人の紹介を受けられます。なお、紹介申込に当たっては、ハローワークへの求人票を求められますので、事前に手配しておくことが必要です。特定技能(建設)では、建設技能人材機構(JAC)以外の人材紹介は禁止されていますので注意しましょう。

2. 技能実習2号から特定技能1号への移行
自社で働く技能実習生がいる場合は、在留資格を技能実習2号から特定技能1号へ切り替えることも
可能です。技能実習生の方が技能実習2号を良好な成績で修了している場合は、特定技能評価試験
や日本語試験が免除されます。優秀な技能実習生にもっと長く働いてもらいたい場合、実習生の意
向が大切ですが、特定技能1号への移行により、在留期間を最長5年間延長可能です。

建設技能人材機構(JAC)への加入に伴う費用は?

建設業の場合、特定技能(建設)人材採用には建設技能人材機構(JAC)に加入する必要がありますが、それに伴い以下のような費用負担が生じます。


建設技能人材機構(JAC)の年会費 賛助会員年会費 24万円
前述のとおり、建設技能人材機構(JAC)の正会員である建設業者団体に加入していない場合、賛助会員(企業・個人)となる必要があります。 

②一人当たりの受入負担金 
年会費に加えて、特定技能外国人を1名受け入れるごとに、毎月の受入負担金が発生します。受入負担金の金額は、特定技能外国人が受けた試験(特定技能評価試験)や、教育訓練の内容によって1人当たり年額で15万円~25万円程度になります。

★ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。

手島行政書士事務所
行政書士 手島昭夫
〒102-0084千代田区二番町9-3 THE BASE麹町 W-212
TEL 03-5776-2463
メール tejima7217@gmail.com 

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