相続財産は自宅不動産くらいしかない!どうやって分けたらいいの?

遺言・相続

生命保険の活用

 一部の富裕層を除き、ごく一般的な家庭の場合、親の遺産の殆どは自宅不動産だけというケースが多いのではないでしょうか。争族に発展する典型的な例です。不動産は預貯金、有価証券等と比べて現金化しにくいため、どうにも身動きが取れなくなってしまうのです。
 
 このような場合には、「代償分割」といって、自宅を相続するものが、自分の預貯金等の資産から他の相続人に対して代償金を支払って解決するのが一つの方法です。

 また、代償金を自分の資産から用意できないような場合に、事前対策として生命保険を利用することがあります。被相続人が生前、自宅を相続させる人を死亡保険金の受取人に指定しておく。保険金は相続対象財産に含まれず、受取人固有の財産となるのです。

 争族は、富裕層だけの問題ではありません。下の参考に記載したように、相続税を支払う割合は、全国の相続発生件数のうち令和2年で8.8%しかいませんが、相続財産が自宅しかないことによるトラブルはどこの家庭でも起こりうるものです。

遺言の活用

 遺産分割協議に当たって、「特別受益」でもめることがあります。特別受益とは、被相続人の生前、特定の相続人が住宅購入資金を贈与されていたり、多額の教育資金の支援を受けていたりすることです。
 また、被相続人の介護に尽くしたとして、一部相続人から「寄与分」を法定相続分に上乗せして要求されることもあります。
 遺言は、これらの場合に有効に利用することができます。事前に準備しておくことにより、被相続人は、自分の意向に沿った遺産の分割を実現することができます。
 注:ただし、遺留分(相続において、法律で最低限決まっている取り分)は、ある程度意識しておく必要はあるかと思います。

土地信託の活用

 土地信託とは、土地所有権者が信託銀行に土地を信託し、信託銀行が資金を調達してその土地に賃貸用ビル等を建設し、賃料収入から諸経費や借入金返済額等を差し引いた残金を、信託配当として土地所有者に交付する手法です。相続した土地が利便性の良い土地の場合であれば、この土地信託の利用も可能でしょう。また、利便性の良い土地であれば、換価分割(土地を売却して相続人間で分配する)もできるでしょう

参考①:令和2年分相続税の申告事績の概要(国税庁)より

1.令和2年分課税割合   

8.8% 課税割合は、平成27年度から8%台で推移中
課税割合とは、相続発生件数の内、何パーセントの割合で相続税の申告がされたかです。相続税の対象者は、約11人に1人ということになります。

2.相続財産の金額の構成比の推移
  (相続納税のある申告書のデータに基づく)

(単位:%)
土地 預貯金有価証券その他家屋
平成30年35.132.316.05.311.3
令和元年34.433.715.25.211.5
令和2年34.733.914.85.311.3
この10年来の傾向として、不動産(土地・家屋)が少しずつ低下して、預貯金・有価証券等の 金融資産が増加する流れは変わっていません。それでも、不動産は、依然約46%と半分近い割合を占めている ことがわかります。

3. 親(亡くなられた方)の財産の平均は6,140万円、中央値は3,450万円
 親の財産の平均は、6,140万円、中央値は3,450万円という調査結果があります 。
なお、東京都の場合 → 平均10,237万円(中央値6,700万円)
データ参照:MUFG資産形成研究所 退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査 (2020年度調査結果)

参考②:遺産分割事件【遺産価額】の割合

 裁判所ホームページによれば、遺産分割事件のうち、遺産価額別の割合は次のようになっている。

(単位:%)
1,000万円以下34.7
5,000万円以下42.9
1億円以下11.3
5億円以下6.4
5億円以上0.6
算定・不詳4.1
(裁判所ホームページ:令和2年度統計資料より)

5,000万円以下が最も多いが、1,000万円以下でも遺産分割事件の34.7%を占めていることがわかる。
 

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