建設工事で元請・下請として仕事を進めていくためには、本来請負契約をきちんと結んでおく必要があります。(下請業者保護のために建設業法で定められています。)現実には、もっとゆるい口約束で済ませてしまっているケースも少なくないようですが、いざ何かトラブル発生という事態もなくはありません。やはり契約関係はしっかりとしておくことをお勧めします。ここでは、建設工事でよく利用される請負契約の3つのパターンをご紹介します。
建設工事を請け負う際の原則的な方法
まず1つ目は、個別に工事請負契約書を交わすパターンです。この際、契約内容に盛り込むべき項目が法律で決められていますので注意が必要です。
建設業法第19条第1項では、「建設工事の請負契約の当事者は、(中略)契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。」とされています。
つまり、建設工事における請負契約には、盛り込むべき項目が定められています。具体的には以下の項目です。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容(任意項目)
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法(任意項目)
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め(任意項目)
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容(任意項目)
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
注:任意項目とは、元請・下請間で取り決めした場合には、契約書に記載する必要のあるものです。
注文書及び請書による方法
原則は上記のとおりですが、建設業者間の実際の取引現場においては、注文書及び請書の形態により請負契約が締結されている場合が多いことを踏まえ、以下の2つの方式による方法も認められています。
当事者間で基本契約書を締結した上で、具体的取引については注文書及び請書の交換による場合
2つ目のパターンです。(基本契約書+注文書・請書)
(この場合も、第1のパターンで説明した15項目については、注文書・請書に記載がない場合基本契約書に載せる必要があります。)
具体的には、下記①〜④のように手続きすることになります。
① 基本契約書には、個別の注文書及び請書に記載される事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付すること。
② 注文書及び請書には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること。
③ 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
④ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
注文書及び請書の交換のみによる場合
3つ目のパターンです。注文書(基本契約約款添付)+請書(基本契約約款添付)
(この場合も、第1のパターンで説明した15項目については、注文書・請書に記載がない場合基本契約書に載せる必要があります。)
具体的には、下記①〜⑥のように手続きすることになります。
① 注文書及び請書のそれぞれに、同内容の基本契約約款を添付又は印刷すること。
② 基本契約約款には、注文書及び請書の個別的記載事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載すること。
③ 注文書又は請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと。
④ 注文書及び請書の個別的記載欄には、法第19条第1項第1号から第3号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること。
⑤ 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については基本契約約款の定めによるべきことが明記されていること。
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること。
★いかがでしたでしょうか。建設工事にかかる契約の結び方がよくわからない、あるいは案を作って欲しいという方はお気軽にご相談ください。
手島行政書士事務所
行政書士 手島昭夫
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